真木悠介『気流の鳴る音』を読みました
こんにちは、先日のバイト代6万円が振り込まれてハッピーなタチバナです。
今まで2万円/月くらいの労働しかしてこなかったので、私としてはなかなか頑張った感があります。
院の入学金くらいは自分で準備したいところですねぇ。
彼氏曰はく「俺の人生を変えた本」
さて、本の話をしましょう。
私が最近読んだのは真木悠介先生の『気流の鳴る音』です。
「知者は“心のある道”を選ぶ。どんな道にせよ、知者は心のある道を旅する。」アメリカ原住民と諸大陸の民衆たちの、呼応する知の明晰と感性の豊饒と出会うことを通して、「近代」のあとの世界と生き方を構想する翼としての、“比較社会学”のモチーフとコンセプトとを確立する。
(裏表紙より)
かつてアメリカの人文学者カストロ・カスタネダは、メキシコ北部に住むヤキ族の老人ドン・ファンの生きる世界を、4冊の著作を通して紹介しました。
この『気流の鳴る音』はその四部作を解釈し、現代日本社会に生きる我々にもわかりやすく伝えるものです。
4つの象限から、順を追ってドン・ファンの世界に迫っていきます。
著者の真木さんの本名は見田宗介で、現在は東京大学の名誉教授をされている社会学者の先生だそうです。
私がこの本を手にしたのは、最近ブックオフのセールでこの本を入手した彼氏に「ほい」と押し付けられたからでした。
彼氏いわく、
「これは俺が浪人中に読んで衝撃を受けた本だからあんたにも読んでほしい。
この本が俺の思考の基礎をつくっている。この構造を学んでくれ」と。
ホゥそれなら読んでみようと思い今に至ります。
読んだ感想としましては、まず何より
「著者は非常に頭のよい人なんだなぁ」
と漠然と思いました。
まず彼氏が言っていたように、構造が非常に巧みです。
我々にはなかなか容易に理解し得ないドン・ファンの世界観を4つのステップ(象限)にわけて解説してくれるのですが、その分け方・順の追い方がとても良かったのではないかなと思います。
その章立ては以下の通り。
I カラスの予言―人間主義の彼岸
II 「世界を止める」―<明晰の罠>からの解放
III 「統禦された愚」―意思を意思する
IV 「心のある道」―<意味への疎外>からの解放
(目次より)
この章立てにより、
”我々が通常縛られている人間世界から一度飛翔する”
という行為の後に、ともすればそのまま行方を見失ってしまいそうになるところを、
”再び地上に舞い戻り「美しい道をしずかに歩む」”
という着地点・行く先まで指し示すことに成功している点が巧みだナァと思います。
ドン・ファン自身が自分の生を通して実践していることなので、まあ当然と言えばそうなのかもしれませんが…
また文章の構造そのもの以上に、私は著者が、これだけの構造を生み出すに至るまでにどれだけの研究を積み、どれだけの解釈を試みたのだろうかという部分に想いを馳せてしまいました。
ドン・ファンやカスタネダの四部作に対して、一つの分析対象という認識を超えて、おそらく大変真摯に、あたたかく向き合っているのを(僭越ながら)感じます。
私は文学徒だからこう認識してしまうのかもしれませんが、なんというか、「文学的なあたたかな知性」みたいなものにあふれているような…
途中から文学作品の分析を読んでいるような心持でいました。
理性の点だけでなく感性の点でも、大変頭の良い人だなぁ、と。
私も斯様な分析を、百分の一くらいでもできるようになりたいものです。
以上真木悠介著『気流の鳴る音』の感想でした。
知性が詰まった本で、学問へのやる気がギュンと増しますね。
がんばります。
いやはや、これを浪人中に読んで感銘受けてた彼氏のかしこさよ...